変わらないものと、変わり続けるもの



──謎のモダン館29年と「演出」という積み重ね

つい先日、僕が主宰している謎のモダン館の公演が幕を下ろしました。
旗揚げから29年。
気付けば四半世紀を超え、いつの間にか劇団はここまで続いていました。

照明も音響も映像機材も、この29年で驚くほど進化しました。今では小さな劇団でも表現の幅は広がり、舞台裏の仕組みもどんどん便利になっています。

しかしその一方で——

セリフを書き、役者が稽古し、演出をつけ、ひとつのシーンの“空気”を少しずつ育てていく。
この“舞台づくりの核心”は、29年前からほとんど変わっていません。

どれだけ機材が発達しても、舞台を舞台たらしめているのは、結局のところ人と人が生み出す空気なんだと痛感します。


■ 稽古場で育つのは「空気」そのもの

公演のたびに思いますが、
舞台づくりは、驚くほど地道な“積み重ね”の連続です。
• 台本を読み込む
• 立ち稽古を重ねる
• シーンごとの空気を探る
• 「なんか違う」と立て直す
• また積み重ねる

ほとんどは見えない作業で、一歩進んでは半歩戻るような時間の繰り返し。
でも、この粘り強い積み重ねこそが、本番のたった1時間半を決定します。

舞台は、嘘がつけません。
積み重ねた分だけ強くなり、稽古が足りなければ弱さを露呈してしまいます。

この構造は、29年前からまったく変わらない真実だと思います。


■ 技術は進む。だけど「伝わる空気」はいつも同じ原点にある

僕たちの周りの技術は確かに進化しました。
照明も音響も映像も、昔では考えられないほど自由度が増えました。
でも客席でお客さんが感じているのは、機材ではなく、その奥で生まれている空気の流れです。

人の体温、声の響き、間の取り方、視線の交わり。
これらが重なって、舞台の“空気”は立ち上がる。
そして、その空気があるからこそ、照明も音響も映像も意味を持つのでしょう。

技術は演劇を支えてくれるけれど、演劇の中心にあるのは、いつだって人がつくる空気。
それは29年前からずっと変わらないと感じています。


■ PADiNは、この29年で学んだ「空気づくり」の延長線上にある

僕がPADiNで伝えたいことは、
この“空気づくり”の技術です。
• どう見せれば空気が生まれるのか
• どの順番なら自然に伝わるのか
• どの間(ま)が心に届くのか
• どう立てば、どう語れば、届けたい形になるのか

演劇の現場で当たり前にしてきたことは、実は舞台だけではなくプレゼンや授業、人前の話し方、イベント運営などあらゆる場面で活きる“演出の視点”です。

29年間、劇場で積み重ねてきた経験を、PADiNを通じて外の世界にも広く還元したい。
そんな思いで活動しています。

来年、謎のモダン館はいよいよ30周年を迎えます。
変わり続けるものの中で変わらず大切にしてきた“空気”を、これからもていねいに育てていきたいと思います。