10数年前、ある新聞で『紙上旅行に出かけよう』というコラムの連載を担当していたことがありました。
その時のものに手を加えつつ、
『紙上旅行に出かけよう』1
紙上旅行という言葉を知ったのは、中学生の頃だった。
正課クラブの選択の際、人気があったフリーテニスに定員オーバーで溢れてしまい、たまたま入ったクラブが「紙上旅行クラブ」であった。
単純に言えば、時刻表やガイドブックなどで旅行の計画を立てるまでのクラブ。何が面白いんだ?溢れて入ったクラブだから、初めは渋々だったと思う。しかしその面白さにのめり込むのに時間はかからなかった。
電車の時刻表。発車の時刻が書いてある本である。その本が、筋書きのないドラマを生み出していく。
「この時間に○○駅に着いても乗り継ぎ出来んなぁ」なんて行き詰っていても、「この列車に乗れば行ける!」と解決できたりする。
僕の興味は下車する場所の名産品や美味い食べ物よりも、もっぱら「どこまで行けるのか」であった。
時間を区切る。例えば長崎駅から始発に乗って、鈍行列車を乗り継ぎながら深夜23:59までにどこまで行けるのか。景色や町の大きさは関係ない。実際にやったら面倒でしょうがない方法を取りながら、出来る限り遠くに行こうとした。
さて、とりあえず遠くまで来た。ここでようやく、どう過ごすのかを考えることになる。
まず大切なのが宿泊場所である。ルールとして野宿はNG。現在のようにインターネットなんて無い時代、ガイドブックに載っているようなホテル以外は写真入で紹介しているような専門誌も見つけられなかったので、屋号と住所と電話番号と大まかな情報(ドライヤーありとか、門限ありなど)が書いてあるだけの本を購入し、自分なりにイメージを膨らませてみた。
そもそも中学生の僕である。イメージと言っても自分の中にたくさん引き出しがあるわけもなく、何を基準に決めるのかと言えば料金だったと思う。紙上旅行では時間や方法と同じくらい、いかに安く旅をするかが重要になってくる。重要と言うよりも、腕の見せ所といったところだろうか。
果たして「腕」を見せる事ができたのか。それはまた別のお話。

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